放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め
入学して高校生になったばっかり。
みんな浮き足だつもんだ。

初めて会う奴らと同じ校舎に押し込められてさ、“さあ、これから3年間、こいつらと泣いたり笑ったりしなさい”ってなれば、多かれ少なかれみんな浮かれる。
だってなにかが起こりそうな予感が、ビンビンするもんね。

俺もさ、多少は浮かれてたんだ。
なんか世界が広がってくような気がしてた。

やめようとしてた柔道への熱もぶり返したしさ、“こりゃあ、この先まだまだいろいろ起こるな”って予感がしてた。
顔には出さないようにしてたけどね、そんなワクワク感があった。

まわりの男子連中なんかは、もっとひどかったもんね。
なんせ勉強ばっかして、今まで女の子と付き合ったことない奴らだもん。

高校受験終わってさ、入学してやっと一息。

進学校だから、クラスを見渡しても、もてそうな目立った奴もいない。

念願の携帯電話は、入学とともに買ってもらったとくれば、
“こりゃ流れは来てるな(ニヤリ)”
みんなそう思うよね。

“うまくすりゃ、自分にも彼女ができそうだぞ”

根拠もない馬鹿げた予感、クラスの男子はみんなそんな予感に酔っ払ってた。

女子がいなくなった時には、“だれは可愛い”とか“だれだれは胸がでかい”とか言い合ってさ。

みんな同じラインに立ってるからね。
スタートの号砲が鳴るのを胸踊らせて待ってた。


俺は柔道への熱が高まってたからね、ニヤついた顔は見せれなかったんだ。
だからクラスの男子の会話にも、あんまり興味ないふうにしてた。

けど女の子と付き合ったことはなかったしね、メールしたりデートしたりとかしたくないかって言えば、やっぱしたかった。

俺もまた、待ってたんだね、スタートの号砲を。
< 45 / 101 >

この作品をシェア

pagetop