放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め
麻薬捜査官が現場に踏み込むように、トイレに入る俺。

そこで俺は信じられない光景を目のあたりにする。

“シット!遠山くん、大かよ…”

そうなのだ、“オペレーション・C”では、並んで小の時にしか確認作業は出来ないんだ。

“やるな…、遠山くん…”

感心するしかない俺。

しかし腹の虫はおさまらない。

“1時間目終わってすぐに大とかまじありえない、家でしてきやがれ”

遠山くんの自由な便意に対し、毒づく俺の中の悪魔。

“まだ作戦は始まったばかりだよ”
と、俺はなだめたものの、納得出来ない悪魔は、無言で個室のドアをノッキン。

“ドン!ドン!ドン!”

激しいノックの音が響く。

圧倒的なプレッシャーに、恐れおののく遠山くん。

「うゎー!入ってます、入ってますぅ!」

さすがは悪魔、遠山くんの絶叫にも怯むことなく、続けてドアをノッキン。

“ドン!ドン!ドン!ドン!”

さっきよりも激しさを増した響き。

遠山くんたまらず
「ごめんよ!ごめんよ!夕飯のカキフライのせいで朝からピーピーなんだよ〜!誰だかわからないけど、ほんとにごめんよ!」
と大声で謝罪。

それを聞いた俺も、
“遠山くんに落ち度はないんだ…、ごめんよ遠山くん!みんな悪魔が悪いんだよ…”
と謝罪。

互いに非を認めあう麗しき日本人の美徳もなんのその、俺の中の悪魔はさらにドアをノッキン。

“ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!”

ドアが壊れてしまうのでは?と思うほどのノッキン。

悪魔、おそるべし…。


扉の向こうからは、

「あっ!あぁ…、裾にかかった…」

と、遠山くんの力ない声が聞こえた…。

「スン…、スン…」
と鼻をすする音も聞こえてくる。

“やばい!遠山くんが泣いてる!”

我に返った俺は急いでトイレを後にした…。
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