放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め
こうなってしまえばあとは簡単。
ステージを支配したマジシャンの快楽がわかったような気がした。

みんなは俺の発言に賛同し、口を開き始める。

「…。そうだな!遠山はキム・ジョン○ルに似ているな!」

「…。メガネ姿も似てるが、チリチリ天然パーマになると完璧だな」

「…。今の遠山…、まさに、スーパー・キム・○ョンイルだ」

男子だけでなく、女子達もこの波に乗り始める。

「遠山くんさ、ちょっとキム・○ョンイルの物真似してみなさいよ!」

「そうよ、手を叩きながら人民を見下ろす、あの真似をしてみなさいよ!」

「“米と重油をよこせ!”って要求してみて!」

「“正男は息子です”って言ってみなさいよ!」

さすがは進学校だけある。
みんなこの手の政治的なネタの扱いはうまい。

そして、このようなやりとりの中、俺は一人ほくそ笑んでいた。

“どうだい、叔父さん…。みんな遠山くんの顔ばかり注目して、うわばきの茶色い染みには誰も目がいってないよ。叔父さん、天国から見てくれているかい…、俺の手品を…”

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