ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
タクシーを降り、玄関に立つスタッフの出迎えを受けた後。
ウシオがロビーを流れる池の中を覗き出したので、
私はそそくさとフロントでチェックインを済ませた。
対応してくれた女性スタッフにたずねてみる。
「申し訳ないんですが、もう一部屋追加してもらうことって可能ですか?」
けれど、
「あいにく本日は満室でして」と苦笑いされ、
ウシオと別室に泊まればいいやという考えは簡単に打ち砕かれてしまった。
「そうですか…。わかりました…」
チェックインを済ませてウシオのところに戻ると、
彼は予定が狂って浮かない顔をしている私に気づいたのか、心配そうに声をかけてくれた。
「どうかした…?」
するどいなあと思いつつ、
「別に…。ただチェックインの時間を大幅に過ぎちゃったから、ちょっともったいなかったなと思って」
そう笑うと、
ウシオもそうだなと言って腕時計に目をやった。
「けど、夕飯までに風呂入る時間くらいあるだろ?」
どうやら、私の目論見は彼にバレてはいないようだった。