涙は煌く虹の如く
序章
君は……

君と逢ったのは5年振りだったかな?

それとももっとだったかな…?

僕の記憶の中での君は明るく活発な女の子。

自然の中で思い切り自分の存在を誇示していたっけ…



でも5年振りに再会した時、あまりの変わり様に僕は絶句してしまったんだ…

君の表情(かお)からは明るさが消えて、誰にも心を開かない娘になっていたから…



けど……

何て言ったら良いんだろう…?



逆に昔と今の君との極端な落差が僕の気持ちを捕らえて離さなくなってしまったんだ…

従妹の君にどうしてそういう感情を持ったのかは今でもよくわからない…

それを他人は”恋”って言うのかな…?

とにかく僕の進む道は君のおかげでガラリと変化してしまった。



咎めているんじゃないんだよ…

むしろ君に感謝しているんだ!

無味乾燥だった僕の心に潤いをくれたのは君だし、何より命を賭すことの尊さを君は僕に教えてくれた。



ありがとう!

それにしても久しぶりに逢った君は……



君は……



人間とは思えなかった…

 

君はとても脆い氷の彫像みたいだった…



君は……



生きる時代を間違えた妖精みたいだった…



君は……



僕は野瀬丈也(のせ じょうや)

長いようで短い…

それでいて久遠の夏が今、始まる…
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