涙は煌く虹の如く
”受験”という言葉が丈也を奮い立たせた、いや、正確にはプレッシャーを与えた。
我に返った丈也は意味なく開いていた参考書のページを本来自分が取り組むべき箇所へとめくり上げ、黙々と参考書に集中し出した。
「…Have you ever loved a woman so much you tremble and pain…?」
無意識のうちに音読になる。
「…The rain is falling through the crystal,sorrow that has surrounded me…」
しかし、その集中力も長くは続かなかった。

「バタンッ…」
乱暴に参考書を閉じる丈也。
「アァッ……!」
そのまま大の字に寝転んでしまった。
「………」
何が気になって勉強に集中できないでいるのか、そのハッキリとした理由を丈也はまだわからないでいた。
そのことがイライラとなり、寝たまま身体を貧乏揺すりさせている。

イライラを鎮めようとして中学生とは思えない程のヘビースモーカーである丈也はテーブルのタバコに手をやろうとするが、
「似合わないよ…」
不意に美久の声が聞こえた。
「……何が似合わないんだろ……?」
そう呟きながら丈也は、
「クシャァッ…!」
まだ数本しか吸ってないタバコを箱ごと握り潰し、
「ヒュゥ…ドコッ…」
そのまま備え付けられたゴミ箱へ放り投げた。
箱は見事にゴミ箱へと吸い込まれていった。

「フゥ……」
大きなため息をついた丈也は再び意識を参考書へと向かわせた。

こうしてU島での初日は流れていった。

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