涙は煌く虹の如く
「ドガッ…ドガッ…!!」
ホテル屋上へ通じるドアを激しく叩く音。
「ドガァッッ……!」
頑丈にかけられた鍵が壊され屋上へ通じる視界が広がる。
「どこだ…!?」
「ここにいるのは確かだ…!」
口々に怒鳴っている連中の正体は警官だった。
5人の警官、そしてホテルの支配人と思しき中年男が丈也と美久を捜していたのだ。
「どこだっ…?」
威勢良く捜索を続ける男たち。
「ズカズカ……!」
「おーいっ…!」
貯水槽の付近にいた警官が何かを発見したようだ。
「ここだっ…!」
その声に誘われ全員が集合する。

「うわっ……」
アイボリー色の貯水槽から血がしたたり落ちていた。
「ガツガツガツ……」
慌ててハシゴを上る警官たち。
「あっ……!」
絶句する警官たち。
「………」

そこにはしっかりと寄り添って丈也と美久が倒れていた。
二人の左手首からは鮮血が川となって流れ続けている。
夏なのに夜露が二人の身体を湿らせている。
丈也と美久は穏やかな微笑を浮かべていた。

全てから開放されたかのように…

もう夜が白み始めていた。

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