涙は煌く虹の如く
終章
半年後

ここは東京のとある初等少年院。
「カツッカツッカツッカツッ……」
「ガッガッガッガッ……」
「スタスタスタスタ……」
院内の廊下を歩く3人の足音。
そのうちの二人は法務教官だ。
「カツッカツッカツッカツッ……」
そして法務教官に挟まれるような形で歩いている少年。
丈也だった。

自殺を図った丈也と美久は警官たちに発見された時まだ生きていた。
そして救急車で病院へと運ばれ二人とも一命を取り留めたのであった。
「………」
丈也は穏やかな表情で廊下を歩いていた。
かねてから持っている優しさが前面に出たものである。
少年院での生活のせいかやや頬がこけ気味であるが生気は失われていない。
むしろ少し伸びた髪の毛と相まって成長を感じさせる風貌であった。
「カツッカツッカツッカツッ……」
足音にも勢いがある。
丈也は院内での生活のこともそうだが、半年前のことを思い起こしていた。

(……僕と美久の旅立ちは失敗に終わった。どのくらい意識を失くしたかわからなかったけど、とにかく目が覚めた時に飛び込んできた風景は病院の真っ白い天井だった…)
「カツッカツッカツッカツッ……」
廊下を右へと曲がる三人。

(……退院してから間もなく僕は傷害で補導された…村杉は死んではいなかった…重傷ではあったけど死んではいなかったんだ…でも、どんな理由があるにせよ僕にはおそらく殺意があったと思う…それに人を傷つけたのはまぎれもない事実だから……罪も罰も受け入れようと誓った……)
「カツッカツッカツッカツッ……」
廊下をどこまでもまっすぐ歩く三人。

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