僕の中の十字架

初めて会った時だって、



『あんた、前髪長いですね。――――これ、どうぞ』



と、親切にも(いや、多分嫌味)ヘアカット用のハサミをくれました。



――ハサミで思い出しましたが、野田さんのハサミはほったらかしですな。まぁいいか。




嫌われても構わないから他人を遠ざけた富士原さん、しかし彼は北村さんに惚れたわけです。


『わざわざハサミをくれるなんて! ――なんて優しい人なんだ(あと、美人だ)!!』


―――なんてね。

富士原さんがズレてるのは今に始まった事ではありませんよ。


好きだから、好かれたい。
まあ最初組んだ頃は、北村さん相当口が悪かった(今もですがね)ので、口喧嘩が多かったけども。



「順子。―――さん」


「名前で、」


「嫌です。順子さん順子さん順子さん順子さん順子さん順子さん順子順子順子順――」


「ぬぁぁあっ! 解ったから! “さん”付けなら良いよ!ってか何だよ!」


「ボクね、貴女が好きです」


「んう!?」





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