僕の中の十字架
〈Eath〉

「クロ、終わったよー」

「よし、ご苦労」

「先生にほーこくして帰ろ! 行ってくる」

「お前じゃねぇぼくの仕事だそれは。待ってろ」

「ほーい。クロさぁ、おばさん達今日遅くなるんでしょ? 今日太平燕だってよ」

「はっはっはっ」


両親共病院で働いてて、帰って来れない日もある。

故に、隣同士でしかも両家の親が友人同士であるサエとぼくの家では、よくぼくがサエの家に泊まったり、サエがぼくの家に泊まったりする事がよくある。
まあ幼馴染みやし。

今日はぼくがサエの家に泊まる予定だ。





図書委員の先生は、隣のクラスの担任の渡辺先生だ。



図書室の場所は三階の北側で、近くの階段を一番下まで下りて、廊下を右の方に行くと職員室が突き当たり正面にある。隣には放送室、ドアの正面に職員用出入口がある。


失礼しますと言って職員室のドアを開けて入り、後ろ手でドアを閉めた。


「…………」


暦の上では秋の真っ只中だというのに、実際は夏の終りのような熱さだ。朝はそれなりに肌寒くなってきたが、日が昇ればめっさ暑い。


最近、ぼくらはよく環境問題についての勉強をする。

国語の時間には人間の愚行を長々と綴った文を読まされ、理科の時間には二酸化炭素とオゾンの関係を勉強し、社会の時間に砂漠化により人が住めなくなった町やあと数年したら沈む島の話を聞き、道徳の時間には絶滅寸前のアホウドリとか蛍を守る活動をする人達の話を聞かされ、“地球を守ろう”なんて決まり文句も嫌になる位聞かされている。


「…………」


まあ考えてみれば地球がぶっ壊れたら生物、つまり人間が消えるわけで。
結果的には自分が可愛いんで大した努力はしない人間なんで

“守る”なんて見せかけガラクタだ。

解ってるけど。





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