HAPPY DAYS
朝、君代はオレの家から登校した。


オレの家族?


多分気付いてない、はず。
起きた時はもう既に誰もいなかった。



…朝まで君代を帰さなかった自分が情けない。
自制心のない男だ、オレは。
いや、男は自制心がないのかも。



ほとんど寝てないのに君代は朝から元気で、ホームでも鼻歌まじりで腕を組んでくる。

オレは何故か何度も振り払った。


「朝っぱらからやめろよ」

「朝っぱらからなのは、純じゃん」

君代は笑いながら指を絡める。


つうか、オレ、元々人前でいちゃつくのとか有り得ねえから。


オレは乱暴に腕を外した、が、君代は余裕の表情で、オレの体に絡み付く。


「純、カワイイ〜」


ホームの人達の不快気な空気にオレの怒りは爆発寸前だった。


オレは今度はかなり乱暴に、君代の腕を振り払った。
さすがの浮かれてた君代も静かになった。

電車がホームに入り、大勢が乗り込んだ。

並んで吊り革に捕まったが、あんまり静かで、今度は心配になって横を見ると、君代は目に涙を浮かべてた。


「…泣くなよ」


コソッと耳打ちすると


「後悔してるの?君代としちゃったこと」


と耳打ち返した。吊り革を持つ腕で涙を拭いている。


「そんなこと…ないよ」


慌ててちょっと声が大きくなった。


車内の注目を浴びてオレはますます焦り出す。


「本当?」


君代は更にワントーン大きな声を出した。


早くこの場から立ち去りてぇ〜と思いつつ、

「うん」

と小さな声で答える。






君代の笑顔とオレの困惑と、沢山の乗客を乗せて、列車はスピードを上げていった。





まじ、ヤバイって。




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