執事の憂鬱(Melty Kiss)
それから。
すぅ、と大雅は息を吐き、大人じみた表情を作った。

次期総長、と呼ばれるに値する表情だと紫馬も認めずには居られなかった。

『何があったんですか?』

『うーん……。
分かる?』

紫馬は冗談めかして笑ってみるが、大雅は硬い表情を崩さない。

『分かりますよ。
おととい、テレビ番組をリビングで見て、途中で自室に引きこもったきり日本中の新聞やら雑誌やらを取り寄せていらっしゃるんですから』

紫馬は諦めたように、口を開いた。
口調はあくまでも、のんびりしたものではあるが。

『俺の大事な先輩がさー、ピンチなんだよね。
でね?
そうなることはだいたい分かってたから、ピンチになったら連絡くれって言ってたんだけど。
全然、連絡くれなくてねー。
なんだか、切ないねぇ。
学生時代の友人は、大事にしたほうがいいよ、大雅くん』

『そうですか。
今まででまだ、友人と呼べる人物には一人も逢っていませんが、そのお言葉は胸に刻んでおきます』

大雅は表情一つ変えずに言う。

『何か手伝えることがあったら言ってくださいね』

『ああ、俺は遠慮せずに言うさ』

どれほど書物を読み漁っていたのだろうか。
紫馬は紅い瞳で笑って見せた。

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