執事の憂鬱(Melty Kiss)
『それならそうと、説明してあげればいいだけでしょう?
都さん、俺の部屋で泣き喚いているんだけどっ』

少し疲れた様子を見せるのは、彼が思春期に入ってしまって自分の感情がコントロールできない時期だからなのかもしれない。

紫馬が大雅に煙草を差し出した。
躊躇うことなく銜えたそれに、素早く火をつける。

『そういうときは、優しく抱きしめて落ち着いたところをがぶっと押し倒しちゃえばいいのよ、簡単に』

あのねぇ、と。
大雅が黒い瞳で紫馬を睨む。

『……紫馬さんじゃあるまいし』

『お、言うねぇ、大雅くん。
俺が抱けない世界で唯一人の人物を手に入れておきながら』

『手に入れるも何も、都さんはまだ7歳ですよ?』

人を犯罪者にするおつもりですか、と。
大雅が紫煙を吐き出しながら肩を竦めて見せる。

『何歳だって両想いなら犯罪にはならないって。ちなみに、俺なら、全然ストライクゾーンなんだけど』

茶目っ気たっぷりに答えてみせる紫馬に、大雅は眉を潜めた。

『ストライクゾーン、狭めてくださいっ』

『善処します』

ひらり、と。
紫馬は片目を閉じて冗談めいた礼を返す。
< 13 / 71 >

この作品をシェア

pagetop