ねもやんな生活
 しかし、そんなことを露とも感じなかった私は、さっそく居間から接着剤を持ってくると、銀歯に取り付け歯にくっつけてみた。

 もちろん結果は…。

「がkj0あぽがkじょおら!!」

 銀歯が無事にはまることなく、大惨事の幕開けである。

 まず、手と唇かくっついた。

 これが痛い!!

 異常に痛い!!

 そして、舌と唇がくっつき、これもまた、離れない!!!

 さらには、この世に接着剤の味を知るものは少ないと思うが、あえて説明してあげよう。

 接着剤は、異様に辛いのだ!!!!

 くっつく指と唇。

 舌と歯と、手。

 もちろん銀歯どころの騒ぎではない。

 口の中は接着剤の辛さで充満しているし、くっついた手と口は離れないし…。

 なおかつ、その姿は尋常なまでに、情けないのだ!!!!

 たまたま家に誰もいない時間にやっていたからよかったものの。それ時間の問題。

 万が一にでも、この状況で親が帰って来ようものなら、言い訳のしようがない!!

「あなた…いったい何を…。」

 などと、全力で白い目で見られるのは目に見えている!!

 まずい!!
 
 うちは普通の中流家庭の円満な家族の集まりなのに、まさかこんなことで家庭崩壊の危機が訪れるとは、夢にも思うまい!!

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