皎皎天中月
 不思議な場所だ。
 あの岩壁を登ってからは、なだらかな丘が続き、町や麓から眺めていたような急峻な山ではない。季節に関係なく、あらゆる植物が生えている。限られた時期にしか取れない貴重な薬草もあり、時間が許せば摘み取り、乾燥させて薬にしてしまいたい。家では薬として渡せる数が少なく、それがあれば症状が楽になるという人達に十分に渡せていない。

 日は南にある。
 それを左手に見て、進む。

 植物は多様で、虫も飛んでいるが、動物の姿はない。草木が風にそよぐ音、そして虫の声。静かだ。 
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