ジェンガたちの誤算
泣き出したくなるような、大声で笑い出したくなるような。

世界はこんなにも広く、素晴らしいと思った一瞬後に、
自分の不幸を嘆くような、そんな気分だった。

それは孤独にも似て私の心を漂っていたけれど、
その時の私はとても満たされていた。

それを仮に孤独と定めたとして、昔読んだ太宰治の小説の主人公がどことなく望んだ
【帰りたい場所】を求める感情とは圧倒的に違っていて、
この場所で何か大きな力に自分が突然排除されても構わない、とさえ思えた。

それくらい前向きな破滅願望が芽生えるほどにやはりその日は晴天で、
マンハッタンの街は人々を歓迎していた。
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