(短編集)クレイジー
 

ひとりきりで、ずっと、ずっと。
最初は親が死んでいった。
その次に兄妹が。
そしてその次は兄妹の子供。
その子供さえも、また。

私は老いることも無ければ死ぬこともない。
不老不死、と言うのだろう。

どうしてこうなったのか、どうして私だったのか。
そんな疑問はもう無い。
答えが分かった訳ではない。
ただ、答えなど無い、それが答えなのだ。

あったとしても、もう知る術はない。

そろそろと伸ばした手はカーテンを掴み、強く引いた。
嗚呼薬が効いてきたのか。
手の震えはいつの間にか引いていた。

窓の向こうには曇った薄暗い空が広がっている。
もう見慣れた、それら。
栄えたここも今では砂の街だ。

神を信じ、神を崇め、自力でどうしようともしなかった人間。
祈れば救われるなんて他力本願、やはり通用しなかったのだ。
異変が世界を蝕み始めた頃にはもう遅かった。
あっと言うまにそれは世界を覆いつくし、人は消え堪えた。

しかし、私はそれでも消えなかったのだ。

冷たく暖かいそんな風が窓の向こうを流れて行った。
人気のないこの街を風だけが行き来する。
荒れ果てたこの世界に。

ねぇ神様とやら。
皆はアナタを信じていたけれど、アナタは違よね。
もし居るのならばとても喜んでいるんでしょう。
アナタはとても人間を恨んでいたようだから。

だから、もうこの星には私だけ。


「ね、…神様?」


そしてそれ以上に、私を嫌っているのでしょう。

信じてなんていないけど、そうする事でしか救われない。
居るのか居ないのか、それさえ明確でないアナタを憎むことでしか、私は救われないんだ。

『 きっと全てが幻で 』

目を覚ませばあの日々に戻れると、そう願ってまた眠りにつく。

絶望よ、こんにちは。




(私もまた愚かで、アナタに縋っているのだ)

end.
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