雪花
 担任から貰った白い封筒の表には、『響雪華さま』と書かれている。
 相馬の字を見るのは、初めてだった。右上がりの少し丸い癖のある文字。
 相馬は、こんな字を書くんだ。
 封筒の裏には、『相馬潤』と彼の名前。

 屋上の冷たい空気の中、しばらく封筒を裏返したり、表にしたりして眺めていた。

 昨日降った雪は、すぐに止み、積もることなく消えた。

 乾いた冷たい風が、肌を刺す。
 雪が降っていた昨日よりも、寒い。

 見上げた空は、青く澄んでいて、私だけが異質な気がした。

「授業サボっちゃった…」

 目を瞑り、冷たい空気を目一杯吸い込む。そして、肺に入り込んだ空気を吐き出す。

 封筒を開ける。
 中に入っている便箋を取り出し、開く。

 もう一度、息を吸い込み、手紙を読み始めた。



    雪華へ

いきなり、こんな手紙、驚いてるやろ?
ごめんな。

どうしても、雪華に言いたい事があったんや。

俺の心臓病は、手術せな治らん。
でも、手術の成功率は50%くらい。手術を受けなくても、ムリをせずストレスを与えなければ、生きていける。ただ、何かあった時は、どうなるかわからんらしい。
ずっと、それでもいいって思ってたんや。







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