雪花
不思議な日
 静かな学校。
 まだ、登校してくる生徒はまばらだ。
 グラウンドでは、運動部の生徒が朝練をしている。
 しかし、校舎の中は静まり返っていた。

「早く、来すぎた…」

 教室にも、誰もいないと中に入ろうとした私の目に、見慣れた後ろ姿が飛び込んできた。

 あれは、相馬だ。

 何をしているんだろう?
 窓の外を眺めているみたいだけど…。

「おは…」

 挨拶しようとした言葉は、声にならなかった。

 彼の目から涙が流れている。

ーードキンッ

 胸の奥に湧き上がる思い。

 綺麗、だと思った。
 冷たい空気の中、澄んだ空気の中、見る彼の横顔。
 頬を流れる涙。

 グラウンドからは、元気な声が聞こえてくる。
 そんな声すらも、澄んだ朝の空気の一部で。



 いつも明るい笑顔の相馬の涙。
 初めて見た男性の涙。

 それは、綺麗でその空間だけ切り取られた絵画か何かのようで、教室に入るのがはばかれた。

 気づかないうちに、半分開いていたドアに手をかけていたようで、『ガラッ』と、静まり返った教室にその不釣り合いな音が響いた。


ーーヤバッ








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