掻き鳴らせ、焦燥。〜春風に舞う〜
予鈴が鳴って、教室へ戻る僕に、珍しく先生が先生らしいことを云った。
「氷室〜、やりたいことを見つけたらなぁ〜、やるべきことにも手は抜くなよ〜。
学生のなぁ〜、“領分”ってやつを忘れるなぁー」
「領分? ですか? “本分”じゃなくて?」
「そうそう、“領分”さ。まぁ、オマエならその内理解できんだろ」
「教えてくれないんですか?」
「そう。答えを教えるんじゃなくて、自分で出す答えに導いてやるのが先生の“領分”ってやつだからな」
「はあ……?」
「まあ、がんばれ。早く行け、遅れるぞ」
「はぁーい」
(呼び止めといて、早く行けってなぁー)と思いながら、とくべつ急ぐ訳でもなく渡り廊下を進む。