あなたが一番欲しかった言葉
「僕がもしエミさんの旦那だったとしたら・・・同じように『子供を置いて出てけ』って言ったかもしれない」

俺を責めてるんじゃないことは、ヨシキの性格上分かっていた。

口調に非難めいたものはなく、ただ現実として自分の立場に置き換えた場合を、ヨシキは淡々と語る。

「イサムが軽い気持ちでエミさんと付き合っていたんじゃないことは、僕もよく分かってる。
エミさんも同じ気持ちだと信じてる。だから・・・だから僕も切なかったんだ」

ヨシキの言葉に、俺は目を伏せた。
真梨子も同じように神妙な面持ちで、ヨシキの話を聞いていた。

「好きになってしまったものはしょうがない。でも、同時に、こんな日がいつか来るんじゃないかっていういう恐れはあったんだ」

ヨシキの言う通りだった。

不倫の代償として、当然の結果なのかもしれなかった。
< 146 / 230 >

この作品をシェア

pagetop