あなたが一番欲しかった言葉
「ヨシ君、聞いて!!
レコード会社にデモテープを送ったら、ディレクターから連絡がきてね、『もう少し聞いてみたい』って言うの!
このことイサム君から聞いてるでしょう?」

「いや、聞いてないよ・・・」

「そう・・・」

しまった、とばかりに、真梨子は目だけを落ち着きなく動かしている。


「もしデビューなんてことになったら、盛大にお祝いしましょうね。
あ、その前に。今夜イサム君と会うんだけど、ヨシ君も一緒に行かない?」

「あ、いや、今夜は予定があるから行けないわ」

予定など何もなかったが、取って付けたような誘いが不満で、反射的に断ってしまった。

3人で会うことにもためらいがある。盛り上がる2人の間で、僕は一体どんな顔をすればいい?
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