あなたが一番欲しかった言葉
「最後のフレーズがどうしても思い浮かばなくて、それまで出来上がってた詩を一度イサム君に聞いてもらおうと、部屋へ行ったわ。

抱きしめてくれた手のぬくもり
あたしは感じることができる
たとえ遠くに離れていても
たとえ2度と会える日が来なくても
あなたをいつもそばに感じる___

その先が続かなかった。

悩んでいたら、イサム君は『素敵な詩だね。あの頃の、エミさんと付き合っていた頃を思い出す。でも今は・・・』そう言って」

「そう言って、どうしたんだ」

ためらいながら、真梨子は言った。

「あたしの手を握りながら、イサム君は言ったわ。
『真梨子、俺はエミさんを心から愛していた。だけど時間って残酷だな。今は心の中に彼女はいない。俺の心の中にいるのは真梨子、おまえだけだ』って」

僕は黙って窓の外を見た。

三分咲きの桜が、街をかすかな紅色に染めている。
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