あなたが一番欲しかった言葉
真梨子を乗せた黒いレクサスが静かに走り去っていく。

リアウィンドウ越しに振り向いた真梨子と目が合った。

隣の息子に何かをささやくと、男の子は口を大きく動かして何かを叫んでいる。

「ば、い、ば、い・・・か」

男の子が大きく手を振った。

真梨子も小さく手を振った。

僕だけが振り返すこともできず、立ち尽くして小さくなる車をいつまでも見送り続けた。


「さよなら。さよなら、真梨子」

さよなら、生まれて初めて愛した人よ。
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