あなたが一番欲しかった言葉
「2人とも何焦ってんだよ。別に言い訳しなくてもいいじゃん。付き合ってるなら付き合ってるって言えばいいのに」

明るく言ってはみたが、この複雑な気持ちはなんだろう。

僕は嫉妬してるのか。
エミさんに?それとも、まさか、イサムに?

イサムとエミさんは一瞬視線を絡めたあと、観念したように真実を打ち明けた。

「隠してたわけじゃないのよ。だけど、あたし、結婚してるでしょう。ヨシキや真梨子に軽蔑されると思うと、なかなか言い出せなくて」

同意を求めるように、エミさんはイサムを見る。

イサムもエミさんの目を見つめ返す。

その仕草だけで、2人が深い関係であることが想像ついた。

ともに毎夜バイトで一緒だったというのに、僕も真梨子も関係にまったく気がつかずにいた。
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