微熱
これでチョコレートケーキが作れると思って喜ぶあたしを見てユキは笑った。

「お前も女だったんだな」

「…いちいちムカつくよね、ユキって」

それもこれも明々後日に控えた、チョコレート会社の陰謀にのっかったからだ。

『告白するならチョコレートと』

そんなバカみたいなキャッチフレーズに騙されている女の子は何人いるだろう。
少なくてもあたしの周りはそんな子ばかり。
あたしは騙されたわけじゃないけど、でも他の人から見ればそれと同じなのだろう。


「で?誰にやるんだよ」

「えっとねー、百合子と心と美香と、あと佐倉くん!あ、ユキもいる?」

「いらねー」

「だよね!ユキなら自分で作ったほうが絶対美味しいはずだもん!」

たりめーだろ、と言うと思ってた。
だからデコピンくらいはされるだろうって、あたしはじっと構えていたのに。

「んなことねぇって」

いつになく弱気な声に驚いた。
< 2 / 20 >

この作品をシェア

pagetop