音色
他人のことだからか、適当に受け流してくれたお母さんの無関心が、かえって救いだった。
きっと、挨拶のようなものなんだろう。
「彩は大丈夫なの?大学」
英語が得意な彩は、東京の外国語大学で学ぶことを、二年生の時点ですでに決めていた。
「こないだの模試ではC判定だった!秋までにBが取れれば大丈夫だって、先生言ってたよ」
机にこぼれたマドレーヌのかけらを拾いながら、彩は朗らかに答える。
その具体的な答えに気圧(けお)されるように、けれど誇らしそうに、お母さんは微笑んでいた。