音色

その土曜日は夜から雨だったから、歌いに行くことはできなかった。

部屋にこもり、少し湿って書きにくいノートに、教科書の漢文を書き写す。

カーテンの隙間から見えるのは、曇った闇ばかりだった。



オレンジの夜

あなたと二人

奏でた夢――




今はただ、雨音だけが、耳を打つ。

重く冷たい雑音は、私の声もかき消してしまう。

私の思いも、闇に溶けてしまう。


届かない、遠すぎる光。


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