ココアブラウン
「日替わりランチ3つ、あとコーヒー」

絵里があたしと雄治の希望を聞くことなく注文する。


「西田さん、新の処遇が決まった」

「え、なんで雄治さんから?部長じゃないの?」

「あいつ、親会社に移籍だ。親会社の社史編纂チーム。ていのいい左遷だな。営業の仕事とはまったく関係ない。だからこれまでのキャリアを生かせない」

「いつから。すぐのことなの?」

「あいつ、検査入院してるだろ。せいぜい1週間くらいのことだと思ってた。だけど、妙だ。まだ退院予定や検査結果の連絡がないんだよ」

「たとえば部長に直接連絡したりとか、親会社の人には連絡あったんじゃなかったの?」

「違う、あいつ俺が電話しても出ないんだ。まあね、病院だから仕方ないといえば仕方ない。だけど、親会社側の窓口は俺になってる。あいつを今後受け入れる以上、そういう連絡は必ず俺の耳に入るはずなんだよ」

「部長は直接井上さんから連絡があって、本人は笑ってたって言ってたわ」

「部長のところにもあれ以来連絡はない。だから俺が動かなければならなくなった。直接病院へ様子を見に行かなければいけないんだ」

「病院へ?だけど検査入院だったらもう退院してるかもしれないじゃない?」

「だから妙だって言ってるんだ。早く戻りたいんだったらとっとと俺のとこに連絡よこすだろ、あいつのことだから。けど、俺、ずっと待ってるけど連絡はないんだ」

日替わりランチが運ばれてきてボックス席で絵里が食べ始めた。



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