ココアブラウン
午後の始業のチャイムが鳴って絵里が郵便を受け取った。

ひとつずつ担当ごとに仕分けしていく。



「先輩、速達ですよ。親展で」


茶色のなんの変哲もない長3の封筒で宛名は社名と部署のほかは「由香里様」と書いてあるだけであたしの苗字はなかった。



「社内に由香里って名前の人、先輩しかいないですよね?出してきたヤツ、親展にするなら苗字まできちんと書けっちゅーの」



裏を見た。差出人の名前はない。

ペーパーナイフを使って封を切った。

中の便箋を取り出すとき、かすかに消毒薬の匂いが鼻をついた。



「こっちのは部長宛、私、届けにいってきます」



あたしは3つ折にされた白い便箋をとりだした。

紙のうらから独特のかぎざきの文字が透けて見える。



あたしはいすに座りなおしてゆっくりと便箋を開いた。
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