ココアブラウン
ゆかちゃん



この手紙をきみが読んでるってことは、もう俺には2度と会えないってことを意味してる。

俺の心臓が止まったら投函するよう医者に頼みました。


俺の葬式のときは会社のヤツらは細かいことはみんなゆかちゃんに押しつけるだろうから

余分な仕事で悪いけどなんとかうまくやってほしい。

それから、どうか幸せに暮らしてほしい。そして、迷わないでください。

どんなふうになっても、きみが進む道はすべて正しいから




たった5行の短い手紙。

署名もなかった。


筆圧は弱かったけど、このかぎざきの文字は見まごうことなく新のものだった。


あたしじゃない誰あてだったってそんなに不思議には思わない文章だ。

だけど、あたしはこの言葉を前に聞いた。

きみの進む道はすべて正しい。

新は熊野古道であたしを抱いたあとそう言った。



便箋から顔を上げたとき、ちょうど部長がオフィスに入ってくるのが見えた。

わき目もふらず歩いてくる。すれ違う社員たちが挨拶をしたけど部長には聞こえてないようだった。

いぶかしげに部長を見つめる社員たち。


部長はいつもの時計の下に立つ。


全員が部長を注目した。









「みんな、きいてくれ」
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