愛して欲しいなんて言わない(番外編)
俺の言葉に
男の眼は泳ぐ

手の中では
愛人からの呼び出しがあり

目の前には社長の息子

男の心はどんなに
締め付けられているのか

汚い大人がいけないんだ

俺は
男のネクタイを掴むと
階段を下り始めた

「電話、出れば?

俺に捕まって
今日は無理だっていいなよ

…ていうかさ
一日に二回もできるの?

おっさんなのに元気だよね

そんなに魅力のある女性なんだ」

男がおろおろしながら
携帯に出ると

どもりながら
女に断りの連絡をいれていた

女はそう簡単には引き下がらない

男は遠回しに
俺に掴まっていると
言っているが

女は気づいてないようだ

「俺との約束
もう忘れちゃったんだね

俺、許さないよ」

男の携帯を奪うと
言いたいことだけ言って
電話を切った

許さないって
恐怖心を煽ったって

俺には何もできないけど

まっ
いっか
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