愛して欲しいなんて言わない(番外編)
「ほんとにこれは酷い」

俺は理科の答案用紙を見ていた

「僕、どうしたらいいのか…」

新人教師の津川ががくりと
頭を垂れた

それなりに用紙は埋まっている
式やら用語の説明やら
答えを書いているが

全て間違っている

見事な間違えっぷりに
俺は答案用紙が
輝いているように見えた

「ちゃんと補習授業もしたんですよ
他の生徒はそれなりに効果は
あったんですけど…」

「阿呆だな、こいつ」

「そんな風に片付けないで
くださいよ~」

俺は答案用紙を
津川先生の机においた

一昨年まで俺が使っていた
理科研究室の机だ

用紙の一番上には
『小西理菜』と書いてある

一年の問題児として扱われている

親の財力で
入学してきたのではないか?
という噂もあるくらい
成績はひどいものだった

授業をさぼっているわけでは
ないが
頭にも入ってないらしい

協調性はなく
友人もいない

ただ一人ぽつんといる

男子に絡まれたことが
一度あるらしい

が、廊下には
失神している男子生徒が三人
横たわっていたとか

担任の藤山先生は
完全に
小西理菜を無視していた

かかわらなければ
問題は起きないと
信じているらしい
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