人の死にまつわる話
父は最後笑っていた。それは私もちゃんと見ていた。
だから、父は笑いながら意識をなくし、冥土に旅立ったのだ。
最後まで冗談が好きで、人と話して笑いあうのが好きだった父らしい最期だったと思う。

享年64歳。
病気がわかってから、わずか3ヶ月ほどの闘病生活。
これがよかったのかはわからない。
ただ言えるのは、まだ早いということだった。

人の命というのは、まるでろうそくの火のようだ、と思った。
ロウが最後まで溶け、徐々に火が小さくなり、ふっと消える。
父の命の火も目の前で消えていったのを目の当たりにし、私はぼーっとそんなことを考えた。
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