人の死にまつわる話
通夜が始まると、続々と弔問の人が集まってきた。
病気のため退職するまで働いていた職場の若い同僚たちもたくさん集まってくださって、涙を流してくれた。
父は還暦過ぎのしがない派遣社員だったが、同僚の人たちとも仲良く仕事をしていたらしく、父が退職する際には「頑張れ!」と書いた寄せ書きとみんなの集合写真を送ってくれたくらいだった。

近所の方も集まってくれた。
自治会で副会長をやっていた父を慕っていたという人もいて、遺族席で焼香の方が涙を流しながら手を合わせているのを見るにつけ、こちらも涙が止まらなくなった。

結婚して実家を離れ、それぞれの生活を営んでいると、お互い知らない顔を持つようになるが、子どもである私の知らなかった父の別の素顔をかいま見たような気がした。
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