あかねいろ


『あたし…実はここ、拓ちゃんの来てた学校だから選んだんだぁ…まさか会うなんて考えたことなかったけど…』

拓巳の顔をちゃんと見て話す夕陽。

大きく深呼吸をした。


『あのね…、あの時はごめんなさい…あたし、最後まで拓ちゃんに迷惑かけてばっかりだった。自分勝手な酷いこと沢山した…』


ずっと、言わなきゃいけなかった事…


『夕陽、それは違うよ…』

拓巳は柔らかく言う。


拓ちゃんのあの笑顔だ…懐かしい。


夕陽は同じような表情で頷く。


『拓ちゃんは…元気?』


夕焼けと拓ちゃんが重なって「元気だよ」と顔から伝わった。


『朝はね、もう本当にどうしようかと思ったの、心停止寸前っ。でも今は案外話せてる…』


クスクスと夕陽は笑う。

気持ちに余裕が感じられる。


『俺も…、実習初日なのに全く手につかなくてさ…』

少し項垂れる拓巳。


『拓ちゃんにもそんな事あるんだね?なんか意外!!』

『ハハッ…。俺は結構駄目人間だからね』

『うそぉ…!拓ちゃんはいつもあたしにとったら大人でカッコ良かったよ』

そよそよと風が吹く。


『そんなことないよ、いつも余裕無くってね』

それを聞いて何かに気付いたように夕陽は…

『無理…してた?…あの頃?』

恐る恐る問う。


『違うよ、俺はね、夕陽が居たからいろんな事、頑張れたんだ。』

頬が桃色になった夕陽を見て拓巳はクスクスと笑う。


『夕陽は、あの頃より更にキレイになったね。』

それを聞いて彼女は静かに笑うと、手すりに寄りかかる。

『今思うと拓ちゃんって、結構恥ずかしいことサラッというんだよね?』

「あはは、そうかぁ?」拓巳は苦笑する。


それからピタッと笑いを止めて彼女の顔をじっと見る。



『夕陽…会いたかった』



< 125 / 469 >

この作品をシェア

pagetop