あかねいろ

拓ちゃん…


『あたしも、本当はずっと会いたかったよ』


オレンジがキラキラ煌めく。

2人を染める。

夏を残した暖かい夕方の風が吹く…


『俺さ、何度も夕陽んち行ったんだ。』

「うん」と小さく頷く夕陽。

『すげー女々しいな、俺』

気まずそうに微笑んで拓巳は言う。

夕陽はすぐに答える。

『違うよ。あたしが逃げたから…。向き合わないで逃げたんだよ…だから…』

悲しそうな顔で拓巳を見て

『あたしね、怖かったの。「他の事よりあたしを考えて」って言っちゃいそうで。拓ちゃんは充分優しかったのに、あたしはどんどん贅沢になって「他の女の子と話さないで」って勉強だって状況が分かってるのに言っちゃいそうだった』


空気を沢山吸い込んで、一気に言った。

『そんな可愛くない自分になるのが嫌だったんだよ。自分の事しか考えてなかったんだよ』


拓巳も夕陽をしっかりと見る。

『俺は…言って…欲しかったな。夕陽は自分のワガママを絶対に言わない。俺はね、少し寂しかったんだ。』

切ない顔で続ける。

『でも…言えない雰囲気を作っていたのは俺だよな…』

夕陽は勢いよく言葉を被せた。

『違うよ!!あたしは拓ちゃんが好きすぎて、嫌だなって思われたくなかったの。だから言えなかった。拓ちゃんのせいなんかじゃない!!』

つい大きな声を出してしまった。

『俺もさ、ちゃんと思ってた事を夕陽に言わなかった。お互い同じように、遠慮してたんだな。もっと話をしなくちゃいけなかったんだ』


ねぇ…拓ちゃん。
あたし…


『ちゃんと喧嘩だってすればよかった。お互い言いたいこと言ってたら、また違ったかもしれない』

拓巳と夕陽は向き合って話をする。

『今こうして話せるのは…やっぱり2年経ったからなんだろうな…。あの頃の俺等だったら、難しかった。』


切ない笑いで紡いだ。


拓ちゃん…あたし、もう逃げないよ。

ちゃんと正面から向き合うから…


大斗…あたし…





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