あかねいろ

― ― ― ― ―


『しげじぃ』

すると大斗が戻ってきた。


『アンタ…相変わらずね…』

夕陽は呆れて呟く。


『何だよそれ?』

少し不機嫌に大斗は返す。


『マスター、あたし今日は帰るね、タクシー呼んでもらえますか?』

『ンだよ…?!送るけど?』

と言う大斗に

『今日は平気、何だか胸がいっぱいだから独りで帰るよ』

と答える夕陽。


『夕陽ちゃん、もし時間有るなら年越しここでやるから来てくれる?』

マスターは言う。


『うん♪来るね♪』

夕陽は返事をした。

しばらく無言で夕陽と大斗はカクテルを呑んでいた。


タクシーが来ると夕陽は挨拶して行ってしまった。


『なんだよ?アイツ…』

機嫌悪く大斗は椅子を蹴飛ばす。


『あんなヤツもぅしらねぇ…』

と言って、先程のお客さんの所へ行ってしまった。


『まだまだ…だなぁ』

そんな大斗の姿を見て、マスターはため息ついた…


―――――


夕陽は帰り道、タクシーの中からネオンの煌めきを浴びていた。



人を想う気持ちっていろんな形があるのかなぁ…


咲さんが大斗に「愛してる」と言う、甘くて切ない想い…

愛してるから、好きだから…

相手を想って自分ができる最上級の事…?

最上級の…愛…


それは必ずしも一緒に居ることではないの?


「愛」かぁ…?

「恋」ですら、なんだかわかんない気がしてきたのに…


なんだか、やるせない気持ちだよ。

そう思うあたしは、まだまだ甘いのだろうか…


咲さんと大斗の関係と繋がり…2人の気持ち…

わかりたいような…わかりたくないような…


あたしは、いつか…見つけられるのかな…

「何か」…今はわからない大切な事を…


ただ…何とも表現できない切ない想いを抱いた…


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