あかねいろ


『テメェ・・・携帯切るとはいい度胸だ』

後ろから声がすると、息を切らせた大斗が入ってきた。

振り返った夕陽は何も言わない。

無表情で大斗を見ているだけ。


『弁当は?』

『あの子は?』

噛み合わない会話。


なんだか変な空気が漂う。


"どうしてあたしが屋上にいるのわかったの?"

なんて聞かなくても…

大斗はきっと来るだろうと思った。


それは不思議とわかったんだ。


だから、あたしはここに居たんだから…


ねぇ?咲さん…?

咲さんみたいな桜が…

とても…


何でかなぁ…

なんだか…泣いてしまいそうです。


胸がいっぱいで…



そして酷く苦しくて…


だけど、なぜそう思うのかは、考えたくないです。



今は未だ


悲しい涙を流したくないから…


ただ…そんな、どうしようもない情けない言い訳をしてしまう。

咲さんに言う事自体が情けないですね…


あのね?

咲さん?桜がね…


誰もが敵わない咲さんの笑顔みたいに…

とっても綺麗なんだよ。




"あたしと大斗は友達"

そう強く自分に言い聞かせた。



『お弁当食べよっ♪』


だからあたしは笑って言ったんだ。


『あの子は、関係ないから…』


それに対して、大斗は素っ気なく答えてた。


クスッ


『プッなにそれ?あたしに言い訳?』


なんだかおかしいっ


『あははっ』

『何笑ってんだよ?』

『別に♪相変わらずね』


少しセンチメンタルになってしまった気持ちを、隠すように笑った。


『どんな意味だよ?』


無意味な言い訳みたいなのを言う大斗が、なんだか可笑しかったから。


クスクス



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