だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
その笑顔が、かろうじてパパがパパであるという痕跡を保っているようにも見えた。

「じゃ、一緒に学校に行っても文句は言わないよね?」

「一緒に、学校?」

言っている意味がまるで分からなくて、わたしは首を傾げる。
パパは躊躇わずに、手入れの行き届いた革靴を下駄箱から取り出した。

あ!
このスーツも靴も清水のものだわ。

いつもまるっきり違うスタイルだから気にしたことなかったけど、パパと清水って背格好が良く似てたのね。

「そう。
昨日、うちの娘を泣かせたのは何処の誰ですかって問い詰めてやらなきゃ」

「だ、だめよっ」

そんな面倒ごとを掘り起こしたってつまんないじゃないっ。

「そう?」

パパは不思議そうに首を傾げた。

「じゃあ、あれだ。
うちの娘が迷惑かけてすみませんでしたって、言いにいこうか?」

「自分で謝れるわよっ」

いちいち、親の手を煩わせようなんて思わないわ。
膨れるわたしの手を、パパが掴む。

「じゃあ、今日はちゃんと教室の中に入れるかどうか、パパが見届けてあげる」

何を言っても放っておいてくれる気はないみたい。
強い力で握られた手に、諦めの視線を送ったわたしは、赤城が運転するセンチュリーに乗り込むほかなかった。
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