だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
23.憂慮を抱いて
◇大雅side◇

『!』

世界一短い手紙は、確かこのマークだったと記憶している。対になっていたのはクエスチョンマークだったか。

都さんは、それを知っていたのだろうか、と、どうでも良い事が頭を過ぎる。

自分の部屋で見た、都さんから来た世界一短いメールを見た直後、白のスーツに着替え、一番気に入っている銃を手に取ると早々に部屋を出た。

「清水っ」

元々、都さん以外に愛想が良いとは思えないが、清水を呼ぶ声が思いのほかとげとげしくて自分で苦笑せずには居られない。

彼は既にモバイルパソコンのディスプレイを真剣に見つめていた。

「私のところにもメールが着ました。
学校からどこかに出かけるようです。
このスピードは、車ですね」

玄関には3台の車。
目立たぬように、白やシルバーの普通車を選ぶあたりが清水の配慮だ。

俺は赤城が運転する車に乗る。同乗者は清水。

他2台の準備をし、1台は奴らのアジトだと目星をつけている場所へとやる。
もう1台はいつでも動けるようにと待機を命じて、邸を出た。


「もう、そちらに向かっています」

ケータイ電話越しに聞く紫馬さんの声も、どこか緊迫感を帯びていた。


なにせ、都さんは出来ることは自分でやる性分だ。
それなのに、わざわざメールを三人に送りつけるなんて、よほどのことがあったのだ。

電話も出来ない状況。

やはり、学校になんて行かせなければ良かった。

――東野は危険分子だったのだ。

やりきれない後悔が痛みと化して胸に走った。

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