月の雫[七福神大戦録]
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黒い影が3つ並ぶ。


コンクリートが打ちっぱなしの冷たい部屋に、カツカツと、足音が響いた。

『弁財天(ベンザイテン)。どこに行っていた?探したぞ』

側を、横切る女の腕を、寿老人(ジュロウジン)が掴む。

『別に……。何処だっていいでしょ。ちょっと確かめに行ってただけよ』

その言葉に、寿老人は呆れたように息を吐いた。

『……あいつの所にか。勝手な行動は慎め、いいな?』

『――わかってるわ』

そう言うと、彼女は腕を振り払い、一人離れた所に座る。


陰の力を持つ男が、クスクス笑いながら、その様子を見ていた。


『寿老人ってさ、弁財天には甘いよね~。あんだけ個人プレーにウルサイ人がさ~』

『何が言いたい?』

『いや~別に?ただ、あんたが女にうつつをぬかしているから、なかなか状況が、進まないんじゃないかと思ってね』

『人間の分際で。口を慎め』

『そんな事言っていいのかな?あんたらには、俺が必要なんだろ?まぁ、見てなよ?俺は絶対に、成功するからさ』

不気味なまでに、余裕の笑みで放つと、男は闇に消えて行った。


『毘沙門天(ビシャモンテン)。お前は、あの男をどう思う?』

寿老人は、がたいのいい毘沙門天の隣に、ゆっくりと腰掛けた。

『……どうとも。私は、あなた様について来たのみ』


『……そうか』





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