月の雫[七福神大戦録]
「あなた達が、神様だって事はわかったわ。でも、その事と、私とどう関係が有るの?」
「櫻井咲。お前の魂は、陽の力を持っている。その力が月の雫を探し出すのに必要なんだ」
大黒天が、真剣な表情で私を振り返る。
「陽の力?そんなもの無いと思うけど……他に探す方法はないの?」
「残念だけどないよ。でも、陽の力に対極な陰の力を持つ者にも、探し出す事は出来るよ。でもね、俺達には、陰の力の者は探せないんだよ」
恵比寿が、苦笑しながら言った。
「でも、確か、アイツ陰の力の者を見つけたって、言ってましたよね?て事は、やっぱり寝返ったって事っすよね?」
布袋の言葉に、誰も答える事が出来ず……
何だか、重苦しい空気が流れだす。
「……」
特に、福禄寿は……。
何故だかわからないけど、私にはそう映った。
沈黙を破ったのは、大黒天だった。
「ま、そういう訳だ。今は俺達しかいないが、月の雫を探し出すしか、道はないからな。奴よりも早く。よって、お前にも危険は及ぶ。昨日みたいな事だって、今後はあるって事だ。だが、今日からは俺達がいる」
「あはは……何よそれ。また襲われるって事?」
昨日の記憶が鮮明によみがえり、私は両手で腕を抱き締めた。
微かに震える身体を、みんなにバレないように。
(……俺達は神だ。絶対にお前を守ってみせる。だから、安心しろ)
あいつ……
初めて会った時もそうだった。
心が温かくなるような、安心するような言葉をくれる。
優しい声で……。
なのに、どうして普段はあんな性格悪いのよ?
無愛想だし、口を開くとイヤミばっかだし!!
初対面の、しかもレディにお前呼ばわりするし!!
天下の七福神の大黒様が、あいつなんて、絶対何かの間違いだわ!!
(……俺にたいする、お前の評価は良くわかった。今後、助けを呼ぶ時は、俺以外のヤツに頼め)
大黒天は、ポケットに手を突っ込み、保健室を出て行った。
また勝手に人の心読んで!!
この男は~~ッ!!
布袋は溜め息ついてるし、恵比寿は手で顔を隠し、肩を揺らしながら笑っている。一番大人の福禄寿は、微笑ましそうに私を見てる。
はぁ~、これから最悪な日々が始まりそうな予感……。