陽だまり
優喜はエプロンを取り外し、わたしの隣に座った。
洗い物は完了したらしい。
わたしは、勿論無視をする。

「無視すんなよー。なんでそんなに怒ってるんだよー」

自分の胸に手をあてて聞いてみろ!

「胸触ったくらいで怒るなよー。そんなんじゃ、この先なーんもできないかんな」

なんもって何をだ。

「ヒナってガキだよなー。女子高がお似合いじゃん」
「なによ、ガキって! 言いたい放題言って!」

わたしは、横でいろいろぶちまける弟を、顔をあげて睨んだ。
また笑みを浮かべてからかわれるのはわかってたけど、我慢の限界だ。
どうしてこう、2つも年下の奴に、ガキだとかなんだどか言われなくちゃならないんだ。

「ほんと、よかったよ」

しかし、睨んだ相手はあたしの予想と違った表情でわたしを見ていた。
というより、見つめていた。
ほっとしたような、困ったような、そんな複雑な顔をして、わたしをじっと見つめた。

「何がよ……」

さっきの勢いこんだ声と違い、弱い声になる。
優喜のその真剣な表情に、気おされてしまった。
見つめられたことが恥ずかしくて、ぱっと視線までそらしてしまう。

「女子高でよかったてこと。今日見た感じだと、オカタそうだし、そうそう変な虫つかないなーってね」
「虫?」

虫がつくって、そんな米や野菜じゃあるまいし。

「ヒナ」

ふいに呼ばれた声に、どきっとした。
てれもあって、何よと言いながら顔をあげたら、わたしの目の前が真っ暗になった。

「んっ……」

唇が何かに触れた。
触れたと思ったら、塞がれた。

「んんっ……」

息ができない。

何が……おきてるの……。

状況をつかめないまま、ふっと唇が開放された。
視界が解放されて目に入ったのは、優喜の顔。
まっすぐにわたしを見つめていた。

長いような短いような、よくわからない間があたしたちの間にながれる。

やがて、力のこもった響く声が聞こえた。

「おれ、本気だから」

な……。

「本気だからな」

わたしはただ、呆然としてしまった。
優喜が何を言っているのか、理解できなかった。
いったいわたしに、何がおきたんだろう。




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