陽だまり
「ひーなー。後片付け手伝ってよーねーってばー」

信じられない。信じられない! 何するんだ、あいつは。
よりにもよって、姉の……わたしの胸を!!

優喜の呼びかけを無視して、ソファの上でクッションを抱きかかえながら、膝をかかえて丸くなっていた。
顔もうずめて、耳もふさぐ。

わたしには、聞こえないんだから。
後片付けくらい、ひとりでやれってんだ。

「ひーなーぁ」

知らない。優喜なんて。
キッチンとリビングが、しきりの無いまま隣り合っているせいで、優喜の甘える声が直接届く。
わたしはさらに無視して、よく見てないテレビの音量をあげた。なるべく音の大きい、バラエティを選んだ。

「なんだよー。無視すんなよー」

自業自得じゃないか。
少しは、反省しろ。
わたしは、さらに音を大きくしてクッションに顔を埋めた。

もう、今日は口きいてやらない。
お風呂ができたら、さっさと入ってごしごし洗うんだから。
こんなことなら、もっと早くお風呂のスイッチいれておけばよかった。

優喜はあきらめたのか、それ以上何もいってこなかった。

バラエティのわいわいと騒ぐ音の間から、優喜の皿を洗っている音がかちゃかちゃと聞こえる。
わたしはしばらく、その音だけを聞いていた。

しばらくすると、テレビがどっっと大きな声をあげた。
どうやら、司会者の芸人さんが笑いをとったらしい。
よく聞いていなかったから何がそんなに可笑しいのか知らないけれど、爆笑は続いている。

うるさいな……。

そう思ってリモコンに手を伸ばしたら、テレビの前に人が立った事に気がついた。
そして、その人は主電源をぷちっと切り、いっきに部屋が静かになる。

「見てないんだったら消すぞ。近所迷惑だし、電気代の無駄」

中学生らしからぬ発言。
いつから、弟はこんな主婦っぽくなったのだろう。

「寝てんのかと思ったら、起きてるじゃん。食ったんだから、手伝いくらいしろよなー」
< 13 / 14 >

この作品をシェア

pagetop