500年の復讐


 ほくそ笑み、
「不思議な魅力?」
「えぇ、他の子には感じない、不思議な力。人を引き寄せるというか。今こうやって向き直っていても、他の子と違う何かを感じるんです。いつからでしたか―――随分昔から感じていたように思います」
 やはり感じる者は感じることが出来るのか?
 彼は顎を触り、考えるように目線を上に向け、
「それに不思議と昔から貴女を知っているように感じるんです。なんでしょうね?この感覚」
「私にはよく分かりません。私は至って普通の娘ですよ?」
「それは本人だからよく分からないのです。当然です」
 本当にそうだろうか?私が普通ではないことを肯定しているじゃないか。
「貴女を昔から知っているというのは、これです」
 そう言って懐から取り出したのは一冊の年月を感じる厚い本だった。本の表紙は薄い緑色で金が縁取りされていて、あちこち剥げかかっている。紙の色は色褪せていた。
「その本は?」
「私の先祖が死ぬ間際に書いたものです。最期が虚しかったのでしょう。後悔と懺悔に囚われていて、若く亡くなっています。哀れなものです。この本はマリア像の下の土台から見つかったんです。専門家が言うには中世のものではないかと言います」
 そう言ってマリア像を指差した。
「この本には"サーシャ"という名の女性が多く登場します」
 サーシャ?


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