【短集・ホラー】白紙の小説


………………は?



「今何て………」

「手術します、と
言いましたが」



淡々と話す医者の目線は、今だに俺の体に向けられている。




「手術ってそんな骨折でいきなりするもんなんですか!?おかしいだろ!?」

俺は慌てて医者を怒鳴りつけた。



「でも、あなたは今日いかれますから……明日じゃ間に合わないんです」


いかれますから?


俺がどこに行くんだ?




「だからっておかしいだろ!?」

興奮する俺へ、冷ややかな眼差しを向けて、医者は静かに言った。




「静かにして下さい。
言ったでしょう?隣の方が退院されるって。次は順番であなたです。でもあなたは骨折という軽傷で済んだから今日です」



何言ってんだこの医者………



俺が黙って医者を睨んでいると、医者はやっと俺と目を合わせた。



体が震えた





医者の目は
哀れな者へ向けられる目線だった


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