【短集・ホラー】白紙の小説


そのことをお母さんに告げたら、お母さんはまるで汚い異物を見るような目で僕を見た。


"話しかけないで頂戴"


そう言ってお母さんは、自室に入っていってしまった。



でも僕は聞いて欲しくてお母さんの後を追いかけた。


そしたらお母さんはカッターを出してきて、僕の腕に突き出した。


ゆっくりと腕に浅く入っていくカッターと、広がる血。


痛いと喚いたら、黙れと罵られた。




痛みを抑えながら、
僕は眠りについた。


と言っても、
階段下にある古新聞やらが置いてある、小さな物置。

そこが僕の部屋。



冬は、布団が無いために古新聞を体に巻きつけて寝た。


狭いけど、体が小さい僕が入るのには安易なことだった。




傷が痛む。

包帯がある場所も知らない僕は、傷をそのままにしていた。


水で冷やしたら、物凄く痛かった。



痛さで頭が朦朧とし、すぐに僕は眠りについた。





………夢を見ていた



お母さんが
"大好きよ"

そう言って
僕を愛おしげに
抱き締めている



突然、傷口が激しく痛んで目が覚めた。


僕の涙が、傷口に伝っていた。



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