Cage
「教授っ」

少しして声がした。
振り返るとミウが通りに立ち止まっている。

「楽しい話、ありがとうございました」
ミウにしては、珍しく大きな声だった。

「ん?」

「元気出たっ」
笑顔で手を振る。

「そっか」
ヤマトも笑った。

「明日は遅刻しないようにねっ」そう言うと踵をかえした。

ヤマトも大きく手を振って返事をした。

「ああっ!」
再び自転車を押し始めると、急に立ち止まって叫んだ。

「朝のエレベーターにいた…」
ようやく思い出したように呟いた。

「そっかぁ」
頭を掻いて、恥ずかしそうに笑った。


ミウは歩きながら夜空に輝きだした星たちを見つめと、普段と変わりない空だが、いつもよりも美しく映っている気がした。
ヤマトの言葉からなのか、ヤマトという存在からなのかはわからない。
少なからずとも、気持ちが高ぶっていることだけは確かだった。
今は、それだけで幸せに思えた。

ヤマトも同じ夜空を見上げると、どこか不思議な想いを感じていた。




そんな二人の出逢いを、冬の夜空は優しい月明かりで満たしていた。







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