ハッピー☆ハネムーン


「……ォィ?……葵?」


気が付くと、目の前には心配そうにあたしを覗き込む慶介がいた。
さっきと変わらない、オレンジ色の空が慶介の肩越しに見える。

呆然としているあたしに、慶介はさらに顔を寄せた。



「……」

「大丈夫か?」



その優しい声に、急に安堵感が胸に広がっていく。



「…慶介……あたし…」

「唸されてた。 悪い夢でも見たのか?」



ゆ…夢?



そうか…夢…だったんだ。



「……覚えてないや」



あたしはそう言うと、慶介に笑顔を向けた。

あたしにはわかってた。
どうしてあんな夢を見たのか。


今の状況とリンクしすぎている。


あたし…不安なんだ。
慶介の気持ちに不安を抱えてる。


でも、あたし信じてるよ?


夢の中で慶介が言おうとした空白の言葉は、きっと……










「体調でも悪い? 今日のディナー、キャンセルしようか?」

「…え?」



その言葉に我に返り、慶介に視線を合わせる。

シャワーを浴びた慶介の体からは、石鹸のいい香りがする。
そして、すでに身支度は済んでいた。



ディナー・クルーズでは男女共に正装が基本。
正装と言っても、Tシャツにジーパンでなければいいと言う程度だ。




青のチェック柄のシャツに、黒のパンツ姿の慶介にあたしは慌てて飛び起きた。

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